信託報酬引き下げから透けて見えるニッセイAMの戦略

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最近、ニッセイアセットマネジメント(以下ニッセイ)が購入・換金手数料なしシリーズの全ファンドの信託報酬を引き下げる予定だというビッグニュースが飛び込んできました。

私は、つい最近たわらノーロードシリーズや三井住友DCシリーズへの乗り換えをしてしまい、ニッセイの信託報酬の再引き下げはないと思い込んでいたところですので、率直に言って度肝を抜かれました。

既にいろいろな議論が行われていますが、本記事ではこのニュースがインデックス投資市場に与える影響を考えてみたいと思います。

1.投資家の立場


まず、投資家の立場からこのニュースを考えてみると、信託報酬が低いファンドがどんどん市場に投入されても、しばらくすればニッセイが追いつくという安心感があれば、乗り換えをする必要がありません。

なぜなら、信託報酬に差があるのはせいぜい1年程度ですし、その間のコストの差もコンマ1に行くかどうか、というくらいのものだからです。

仮に1000万円分のファンドを保有していて、0.1%の信託報酬の差が1年続いたとすると、違いは1万円。これは無視できるほど小さいとまでは言えないものの、次々とファンドを乗り換える手間を考えれば個人的には十分に許容範囲です。

そして、ニッセイのファンドを買ってそのまま放置していれば、信託報酬最安のファンドに生まれ変わるのです!このインパクトは大きい。

これなら、管理が面倒になることを考えれば(私は最近かなりごちゃごちゃしてきて困っています)乗り換えをかなり抑制できると思います。私も乗り換えたことをかなり後悔しています。

さらに、「ニッセイのファンドなら保有し続ければ信託報酬が最低水準になる」という安心感があれば、これは現在の信託報酬とは別の「ブランド」になります。

ニッセイは既に一度信託報酬の引き下げを行っているので、二回目を行うという信憑性は非常に高いと思いますが、三回、四回、と信託報酬が引き下げられていくと、単純に信託報酬が低いファンドとは一線を画した信頼につながると思います。

2. ライバルファンドの立場


想像するに、今回の信託報酬引き下げはライバルファンド(あるいはこれから参入を考えている運用会社)にとってかなりの衝撃になるように思います。

なぜなら、これまでのような「信託報酬最安値!」というセールストークが使えなく(あるいは使いにくく)なるからです。

信託報酬が低いことは、運用会社(と販売会社)にとっては利益率が下がることを意味しますから、本来は望ましいことではありません。

それではなぜ信託報酬を下げるのか、と言えば、それによって資金を集められ、規模のメリットによりライバルに対して有利な立場を築くことができるからに違いありません。

特に、iDeCoの対象が広がり、市場が急拡大するタイミングで一気にシェアを握れれば、その後の競争はかなり有利になるはずですし、ここに来て各社の新商品の発売ラッシュがあるのもそれを狙っているはずです。

…しかし、ニッセイが信託報酬を引き下げ続ける限り、この手はもう使えません。

なぜなら、1で書いたように、ライバルファンドの信託報酬が最安であったとしても、ニッセイのファンドを保有する投資家は もう乗り換えなくなるからです。

さらに、信託報酬がじりじり引き下げられる消耗戦になると、知名度や純資産額が大きいファンドが有利になると考えられます。

ニッセイのファンドは純資産額が大きく、現在も各証券会社の毎月積立額の上位をキープしていますので、信託報酬が引き下げられればさらに有利な立場になるでしょう。

ということは、これから新規参入を行う企業はとてつもなく不利な立場に追い込まれます。場合によっては、商品投入を取りやめたり、戦略の練り直しを強いられたりするのではないでしょうか。

3. ニッセイの立場


このタイミングで信託報酬引き下げをリークしたニッセイは策士に違いありません。

来年のiDeCoの対象範囲の拡大を迎え、また、Fund of the Yearの連続受賞を狙っているとしか思えない絶妙なタイミングには驚嘆します(同様の声もあちこちで聞かれます)。

また、もともと信託報酬の引き下げが可能なように(引き下げ交渉がしやすいように)販売会社を厳選していたのではないか、とか、ファンドの数を抑えていたのではないか、という声もあるようです。

もしこれらが全て仕組まれたことだったとしたら、つまり、もともと昨年の信託報酬引き下げを終わりにするつもりではなく、再引き下げの余地を残していたとしたら…、場合によっては、ファンドを設定する段階から信託報酬の引き下げを視野に入れて体勢を整えていたとしたら…、と考えると空恐ろしくなります。

ヨット競技では、一度リードしたら、相手と同じコース取りをし続けるという戦略があるそうです。このような戦略を取っている限り、後続からのリードを広げることはできなくても、詰められることは絶対にありません。

つまり、ニッセイがこのような戦略をとり続ける限り、ライバルファンドは絶対に純資産額で追いつけない可能性があります(注:ぱっと見た感じではさまざまなアセットクラスでニッセイのファンドは純資産額がトップあるいはそれに近い水準のようなのでこう書きましたが、マザーファンドなどを含めると違ってくるかもしれません)。

私がライバルファンドの運用会社であったら、このような状況では撤退を考えるか、あるいは逆にガチンコ勝負でニッセイとの競争に臨むよう腹を決めると思います。

一個人投資家としては、現在保有しているファンドの運用会社が後者の道を選ぶことを願っています。

4. まとめ


以上、信託報酬再引き下げのニュースを聞いて感じた私見を書き連ねてきました。

万が一信託報酬引き下げが実現しなかった場合、この記事は単なる妄想に終わりそうですが、市場を引っ張ってきたニッセイさんのことなのでやってくれると信じています。正式アナウンスを待ちたいと思います。

このニュースは、自分のような個人投資家にとっては非常に喜ばしいものですが、ここまで下がるとDC専用ファンドなどとほとんど差がなくなるため運用会社の利益構造は気になります。

すごい時代になりましたが、運用会社の皆様には、経営の健全性と健康に気をつけつつ頑張っていただきたいものです。

なお、ニッセイさんには心からの敬意を表しますが、積み立て商品をニッセイに戻すのは、信託報酬の引き下げが正式に発表されてからにしたいと思います(笑)。
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すいさく

Author:すいさく
40代、2015年8月頃から投資らしい投資を始めた初心者の日々をつづっています。

インデックスファンド・国内外のETFを中心にバイアンドホールドを基本に投資していますが、日本・海外の個別株式も一部保有しています。

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