2017/07/23

1.はじめに
よく「普通の人でもできる○○」ってあるじゃないですか。
私はこの手のものを見たら一度は疑うようにしています。
なぜなら、そもそも書き手が「普通」の方でなかったり、自分の方が、書き手が想定する「普通」から外れていたりして、ほとんどの場合内容が合わないからです。
2.「大炎上唐辛子」の例
たとえば、最近、アサヒグループ食品から「大炎上唐辛子」という商品が発売されました(セブンイレブンの店舗または
通販サイトで買えます)。インターネットを見ると、「罰ゲーム並みの辛さ」なんて書いてあります。
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セブン‐イレブンの「アサヒ 大炎上唐辛子」を試食 罰ゲーム並みの辛さ(Livedoor NEWS)
というわけで、わくわくして食べてみました。
…が、思ったほど辛くなくてびっくりしました。心地よい辛さという意味では許容範囲ですが、正直言ってもっと辛いものを期待していたので完全に拍子抜けです。
個人的には、これなら子どもでも大丈夫な辛さだと思います(地方にもよりますが、タイ人なら普通に子どもでも食べている辛さですし、自分も子どものころからこれくらいは食べていたなあ、というレベル)。
黄色で「CAUTION」という表示がたくさん入って、「激辛」とか「大炎上」というネーミングをしている割には物足りないと個人的には感じます(注:最後までお読みください)。
3.私は「普通」の人
いや、私は、どこにでもいるような普通の40代サラリーマンです。
辛いものは嫌いではありませんが、どちらかという得意ではありません。
タイ料理屋で、辛い辛いと言いながら涙目になって、出された唐辛子を食べきれなかったことが何度もあります。
周りには自分より辛いのが得意な人がいくらでもいます。
私なんて、彼らの足元にも及びません。
そんな普通の人間からしてみても、この「大炎上唐辛子」は「大炎上」というほどではないんじゃないかというレベルです。
4.何かおかしくない?
ここまで読んで「自分は本当に辛い物が苦手なのだが、面白そうだから自分も試してみよう」と思われた方(たぶん、いらっしゃらないと思いますが)には、やはり慎重に判断することをお勧めします。
なぜなら、私の「普通」と読者の方の「普通」は実は全然違うかもしれないからです。
一応、自覚はありますが、たぶん私の辛味への耐性は平均的な日本人としてはかなり高いと思います。
さすがにタイ人平均よりは低いと思っていますが、タイ人の友人と同じものを食べて、相手は辛くて食べられないのに私は平気なこともよくあるので、たぶん、世界レベルでも上位数割には入るような気がします。
身の回りには私より辛味好きの人間はたくさんいますが、それはきっと類は友を呼ぶ、でたまたま似たような嗜好の人間が集まっただけなのだと思います(もちろん当人たちはいたって「普通」だと思っているわけですが)。
つまり、書き手のいう「普通」は何か、ということを押さえておかないと、とんでもない勘違いをしてしまう可能性もありますし、書き手もこのことをある程度自覚する必要もあるように感じるのです。
5.同じことはほかにも言えそう
投資、節約、ダイエット、英会話、など、「普通の人でもできる○○」という本や記事はたくさんあります。
書き手は必ずしも紛らわしい書き方をしているつもりはないかもしれませんが、無意識に「普通」を自分自身と同じところに設定しているため、実際は必ずしも一般化できないこともあるでしょう。
こういうときには、読み手としては、その書き手が設定する「普通」がどこにあるのか考えた方が安全だと思いますし、逆に、そう考えることで、書き手の「普通」と自分の「普通」のずれが分かって、より記事の主旨を深く理解できるようになるかもしれません。
たとえば、ダイエットの場合、食事制限と適度な運動さえしていれば成功確率はかなり高いはずですが、「普通の人でもできる食事制限と適度な運動をするだけダイエット」というタイトルの本があったら、疑わしいと思う方は多いでしょう。これは、食事制限と適度な運動をきちんと実行できるのはもはや「普通の人」ではないと思われるからです。
でも、逆に、「書き手の考える『普通』の要素で自分に足りないものは何か」と考えると、自分にとって運動をする時間が作れるかどうか(あるいは時間を作るにはどうしたらよいか)、食事制限をするための工夫は何か、と自分の環境に引き付けて応用することができるかもしれません。ここまで考えるなら、決して上記の(架空の)本は無駄ではないと思います。
6.終わりに
個人的には、厳密な意味での「普通」などというものはこの世に存在しないと思っていますが、「超人だけが成功する○○」というタイトルでは本の売り上げも期待できないでしょうから、「普通の人でもできる○○」は一種の必要悪なのだと解釈しています。
これに対して読み手や書き手の立場からできることは、上にも書いたように、話題に上っている「普通」はどんな意味か、立ち止まって考えることなのではないでしょうか。
余談
それにしても、日本で一般に流通しているものには、私のような「普通の人」が本当に辛いと思う商品は残念ながらほぼ皆無です(最近中本の北極ラーメンがセブンイレブンで発売されていますが、これはまずまず)。
ジョロキアという世界最辛の唐辛子(ハバネロの数千倍?の辛さだとか)を個人輸入することもできるらしいので、いつか試してみるかもしれません。
もちろん、旨味があっての辛味ですから、その場合は自分で料理を工夫してみる必要があるでしょうね。