本書の概要
この本は初心者がインデックス投資を始め、継続するコツをコンパクトにまとめたものです。
あまりにコンパクトなので、思ったより早く(全部で1時間くらい?)読み終わりましたが、内容が薄いわけではなく、本当に必要な情報が短くまとめられているのには驚きです。
第1章「そもそもインデックス投資って何?」
第2章「『つみたてNISA』で超おトクに始めよう」
第3章「『長期投資に出遅れなし』っていうコレだけの理由」
第4章「ど素人でもお金が育つ運用のツボ」
では、インデックス投資の基本を述べていますが、ボラティリティを抑えることの大切さ、つみたてNISAの制度の説明、アセットアロケーションの考え方、現代ポートフォリオ理論、リバランスなど、専門的になりそうな内容をあっけないほど簡単に(しかしツボを押さえて)説明しています。
すでに知識があるから頭に入りやすかったことを割り引いても、この説明はかなり秀逸だと思います。
また、
第5章「暴落を利益に変えるシンプルなリスク管理法」
では、インデックス投資を継続するためのキモとなる、資産価格の大幅な下落時への対処法が書かかれています。
NightWalkerさんが挙げる対処法は、
・積立を続ける
・無リスク資産を持つ
・収入を得るために働く
の3つですが、やはり実体験に基づいて説明しているところに説得力を感じます。
本書のキモは第6章・第7章
語り口は独特とは言え、ここまでの内容であれば、本書は「シンプルなインデックス投資の入門書」で終わったかもしれません。
しかし、ここから、つまり第6章・第7章が本書の真骨頂です。
まず、
第6章「アーリーリタイアする時チェックしたこと」
では、やはり実体験に基づいてアーリーリタイアが可能になる条件を説明しています。
NightWalkerさんは勤務していた会社の早期退職制度を利用してアーリーリタイアされたようですが、
・年金は足りるか
・生活費は足りるか
・老後の運用資産は確保できるか
という3つの判断基準を考慮したという点がとても参考になります。
また、生活費を考える上でも、飲食費、スーツ代、本代など、仕事に関連する費用が多いことがわかった、というように、非常にリアルな記述が多くあります。
私自身は現時点ではアーリーリタイアは考えていませんが、本書では、このような判断基準が明確に挙げられているため、いざ自分のこととして考えなければいけなくなった場合も役立ちそうです。
一方、「アーリーリタイアは究極の自己責任」「自分自身に命令しない者は、いつになっても下僕にとどまる by ゲーテ」という言葉に表されているように、安易にアーリーリタイアを勧めるのではなく、自分自身で考えることが何よりも大切だという戒めも、とても身に染みるものでした。
第7章「世界一カンタン ゆるトク出口戦略」
では、原則として資産運用期と同様の考え方をしながら、少しずつ資産を取り崩す方法を述べていますが、ここでも、
・まったくの「ほったらかし」はありえない
・「まったく勉強しない」もありえない
・出口戦略の根幹は金融リテラシー
とやはり自分で責任を持って知識を身につけることの大切さを説いています。
これをきちんとやることは、実際のところ「世界一簡単」なことではないのかもしれませんが、それでもあえて学ぶことを薦めているところに著者の良心を感じました。
最後に
本書は
「投資と人生は似ている」
と書かれて締めくくられています。
その心は以下の文章に表れているのではないでしょうか。
人間、生きていると、必ず、転機とかチャンスがめぐってきます。ところが、私もそうだったのですが、その転機やチャンスは、時に危険を伴うネガティブでリスキーなことにも見えたりします。でも、そこで選ばなければ、成長なりステキな出会いなり新しい展開なりが、遠ざかることもあります。
リスクを取って人生のチャンスをつかもうとするマインドと投資をするマインドって、本質的に同じモノではないでしょうか。人生だってギャンブルみたいなところは多々あります。そう考えれば、投資のリスクなんて、コントロールできるんですから、たいしたことはありません。(強調は原文のまま)
これまでも
辛味まみれのギャンブルのような人生を送ってきた私としては、この言葉に強く共感しますし、そのすぐ後に書かれていた「楽しめる投資=続けられる投資」という考え方もすんなり心に入ってきました。
私の場合は、インデックス投資を中心にしながら日本・米国の個別株式を保有したりしているため、「これでいいのだろうか」という迷いもなかったわけではありませんが、この言葉を目にして気持ちがラクになったような気がします。
私にとって、今のやり方が楽しめ、続けられるのであれば、きっとそれが自分にとってちょうどよいやり方なのでしょう。
この辺りは、NightWalkerさんの考えとは多少違うのかもしれませんが、最後に書かれているように、私も長期投資の旅を「まだまだ楽しんで」いこうと、本書を読んで、改めてそういう気分になれました。
インデックス投資の入門書ながら、随所にNightWalkerさん節が見られる本書は良書だと思います。
ぜひ多くの方に手に取っていただきたいと思います。
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