【書評】『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社」の見つけ方』

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はじめに


大和住銀投信投資顧問のシニア・ファンドマネージャーで国内中小型株の発掘に定評のある苦瓜達郎氏の本が出版されたことを知って購入してみました。



インデックス投資をコアにしている私がなぜこの本に興味を持ったのか不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、サテライトとして行っているすいさくファンド(愛称:サボテン)の運用に役立つだけでなく、さまざまな笹に富む内容だったので以下に紹介したいと思います。

本書の概要


著者の苦瓜さんが運用する「大和住銀日本小型株ファンド」「ニッポン中小型株ファンド」はR&Iファンド大賞の国内中小型株式部門で最優秀ファンド賞や優秀ファンド賞に選ばれているとのことで、かねてから興味を持っていました。

本書は、「中小型のことばかり考えてきた私(筆者注:苦瓜氏自身)の『頭の中』をお見せし、その魅力をお伝えできればと考えて執筆した」ものだとのことで、それが新書1冊の価格で読めるのはなかなかのコストパフォーマンスではないかと思います。

具体的な内容のイメージをつかんでいただくには、以下の目次を見ていただくといいかもしれません。

第1章:株式市場は何物なのか
第2章:誰にも開陳したことがない私の投資哲学
第3章:「すごい会社」はこうして見つける
第4章:中堅企業はこんなにおもしろい
第5章:「苦瓜式」銘柄・情報整理術

見どころは第1章


上記のメニューの中でも一番面白いと思ったのは第1章です。

ここで、苦瓜氏は「株式市場は『横暴な上司』」「株式市場は下品で間違いだらけ」など独特の言い回しを使って、以下のように、株式市場が効率的であるとは限らないと主張しています。

株を買うのに対象である企業を見ようとせず、他人の動向を見て行動するというのは、生産的ではない話だと思います。
 しかし現実には、チャート分析を中心に株式投資をする人たちの行動の影響もあり、株価が理屈に合わない動きをすることはよく起こります。
 そして、そういった「おかしな値動き」は、一度起きると、一方向に向かって続きがちな傾向があります。本来、値上がりするに足る価値のない銘柄が、株式市場の、
「もっと上がるに違いない」
 という根拠のない予想や願望、さらには、
「儲かるに違いない、儲けたい」
 という欲望に乗って、どんどん値上がりしたりするわけです。(上掲書)


一方で、苦瓜氏は「株式市場には、株価を正しい方向に向かわせて、本来あるべき適正な水準に戻す「引力」がある」という信念に基づき、

「適正と考えられる株価よりも割安に放置されている銘柄を買い、適性水準になるのを5年でも10年でも待つ」
「株価がさらに大きく下がらなければいい、いずれ適正な株価に戻ったら売る。いつ株価が戻るのかも、株価上昇の理由も問わない」
「いつ来るかわからない株価上昇を待って、ひたすら我慢する」

というようなスタンスで運用を行っています。

要するに、基本的にはバリュー投資を志向しているのだと理解しました。

第2章以降


第2章では、PERなどの指標の使い方、業績予想の限界、中小型株の優位性、テーマ投資の問題点について触れています。

業種に関わらず同じPERは同じように扱う、業績予想は1年後までで、それ以上は適正な株価を考えるのに好ましくない、などの考え方はほかではあまり見ないので、率直に言ってかなりびっくりしましたが、氏なりの理由があるので非常に興味深く感じました。

第3章では、苦瓜流の「すごい会社」の見つけ方を述べていますが、投資対象の企業の姿勢を見るために、ターニングポイントとなった出来事への対処方法に注目しているところが面白いです。

ほかにも、実例を挙げながら、企業の真実の姿になるべく迫るための工夫を説明しています。

第4章では、さまざまな特徴を持つ中堅企業への投資の面白さを述べています。

食品加工機械、ブライダル、インターネット、不動産など、あまり注目されていない、あるいは、成長の見込みが少ないと思われる産業に関する独自の視点は面白いです。

第5章では、「苦瓜式」の銘柄情報の整理の仕方を紹介しています。

把握しやすい程度にまとめながらセグメント別に業績をチェックしたり、「自己資本」「有利子負債」「設備」「運転資金」「現金」の5つにバランスシートをまとめて考えるなど、情報を整理するための工夫は面白いです。

さらに、株式投資で「これをやったら負ける」というパターンとして、「人の半歩後ろをついていく」ことを挙げ、「株式投資には神話はない」(夢のような成長ストーリーはない)と戒めています。

最後に、「株式市場がボロボロになったときに買い、そのまま気絶したようにそのことを忘れてしまう」という「気絶投資法」を勧めています。

これは、なかなかできないことかもしれませんが、やはり効果は絶大なのでしょう。

まとめ


こうやって見てみると、独特のやり方も多少はあるものの、苦瓜氏の運用スタイルは泥臭いことを地道に行う、拍子抜けするほど「普通」のことです。

本当に難しいのは、それを貫き通すことだと思いますが、それは氏が最終的にはマーケットを信頼しているからだということが印象に残りました。

私としては、あくまでもコアはインデックス投資だと考えており、すいさくファンドはサテライトとして少額で運用するつもりなので、本書に書かれていることをすべて自分で実行するつもりはありません。

また、苦瓜氏が運用する「大和住銀日本小型株ファンド」「ニッポン中小型株ファンド」は非常に魅力的ですが、信託報酬率が2%近くと高額なため、申し訳ありませんが、おそらく保有することもないでしょう。

しかし、自分が注目する中小型株で運用する方がこのような考え方をしていることが分かり、とても参考になったと同時になぜかほっとしたような気がします。

私が低位株や単元未満株を中心に運用している、国内個別株式+J-REITのポートフォリオ、すいさくファンド(愛称:サボテン)では、私は「本来は成長の余地があるはずなのに、何らかの理由でかなり割安に放置されている」と判断した場合以外は買い付けをしないようにしていますし、一度買い付けを行ったら、前提条件が崩れない限り何年でも待ち続けるつもりでした。

また、少なくとも、日本株式であれば、あまり一般に注目されていない中小型株が相対的に有利だろうとも思っています。

そういう意味では、私が初心者なりに頭を絞って考えたことが、この本によってすっきりと整理されたように感じました。

直接的な投資手法としては、必ずしも本書の内容に従うつもりはありませんが、この本の内容はきっとどこかで生きるのではないかと信じています。

特に国内の中小型の個別株式への投資を考えているのであれば、一度目を通してみるのも良いかもしれませんね。

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プロフィール

すいさく

Author:すいさく
40代、2015年8月頃から投資らしい投資を始めた初心者の日々をつづっています。

インデックスファンド・国内外のETFを中心にバイアンドホールドを基本に投資していますが、日本・海外の個別株式も一部保有しています。

2017年2月現在の方針はこちら

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