【書評】『世界のエリート投資家は何を考えているのか』

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はじめに


最近出版された話題の本だったので、『世界のエリート投資家は何を考えているのか』を読んでみました。

本書は


この本は、コーチとして知られるアンソニー・ロビンズが多くの著名投資家へのインタビューに基づき「最も公平で実践的な投資法を整理し、大衆に提供すること(序文より)」を目的としたものです。

原書は1冊だったものを、日本語版では上巻に当たる本書と、下巻に当たる『世界のエリート投資家は何を見て動くのか』の2冊に分けて出版されています。



前半の内容


かなり大風呂敷を広げた感があるタイトルですが、内容は意外と堅実です。

まず、第1章では、平均寿命の伸びや年金制度の疲弊によって「もっと投資して貯蓄する」ことが重要になっていること、そして、「無意識の惰性」に従うがゆえにそれが難しいことを述べ、それを打ち破ることを勧めます。

その後、複利の力や天引き貯蓄の効果を述べているところは「となりの億万長者」や「バビロンの大富豪」を彷彿とさせます。

一方、第2章では、手数料が高い割に市場平均に勝てないアクティブファンドが多いこと、確定拠出年金(401k)では手数料が高いものが多いこと、ターゲット・デート・ファンドも必ずしも保守的に運用されているわけではないことなどを述べており、まるでインデックス投資の入門書のようです。

第3章では具体的な目標を定め、第4章ではリスク許容度を考えながらいろいろな資産を使い分けることを勧めます。

オールシーズンズ戦略


本書の目玉は第5章に書かれている「黄金のポートフォリオ」あるいは「オールシーズンズ戦略」の紹介でしょう。

世界最大のヘッジファンドの創業者として知られるレイ・ダリオに対して、著者が

「もし資産ではなく、投資原則や投資ポートフォリオしか子孫に譲れないとしたら、どんなシステムを譲るか?」

「景気のよし悪しに関係なく、金儲けができる大衆向けのシステムとは、どんなシステムか?」

と鋭く迫った際に聞き出すことができたのがこのポートフォリオだとのことで、この本にも書かれているように、確かに1500円程度でこのような問いの答えが書かれているのなら悪くないように思います。

このポートフォリオでは、

・株式を30%
・中期米国債を15%
・長期米国債を40%
・金を7.5%
・商品取引を7.5%

組み入れることを提案しています。

なぜこのような組み合わせをするのかについては本書を読んでいただくのがよいと思いますが、インフレ・デフレと景気拡大・縮小の2×2=4通りの組み合わせを「季節」として、どの組み合わせでも同等のリターンを得ることを目標としているようです(私は4つのケースでそれぞれリターンが高い戦略の平均をとったものだと理解しました)。

一見すると、やはり金と商品取引で計15%を割り当てているところが気になりますが、リターンを追求するというより、インフレヘッジやリスク分散を念頭に置いたもののようで、大学・年金基金などにも通じる考え方なのかもしれません。

巻末の山崎元氏の解説では、このオールシーズンズ戦略を日本の個人投資家用にアレンジしていますが、そちらでは実物資産はあっさりカットされ、その代わりに金10%、J-REIT5%という比率が提案されています。

全体の印象


上にも書いたように、大げさなタイトルから連想するよりずっと真面目な本でした。

また、ジャック・ボーグルの言葉を引用していたり、市場平均に負けるアクティブファンドが多いことを指摘し、「オールシーズンズ戦略」でもインデックスファンドやETFの活用を勧めるなど、インデックス投資の教科書かとも思う記述も少なくありません。

「オールシーズンズ戦略」では金や実物資産を組み入れているのは自分のこれまでの考えとは違っていましたが、逆に、どういう局面で金や実物資産が有用になるのか(インフレかつ伝統資産価格が下落しているとき、ということだと理解しました)イメージできてよかったです。

また、前半の複利や天引き貯蓄の効果を述べているところなど、これまでに出版された資産形成本の集大成という感じもあり、基本的内容から具体的なポートフォリオまでしっかり書いている密度の濃い本だという印象を持ちました。

後半の「オールシーズンズ戦略」のポートフォリオについては評価が分かれるところかもしれませんが、この本に書いている内容を基本として身につければ少なくとも金融機関のカモにされることはないように思います。

逆に、全くの初心者が一読してこの本の内容をしっかりと理解するのはかなり難しいかもしれませんが、興味を持たれた方は是非読んでみてください。

なお、本書が思いのほか良かったので、下巻に当たる『世界のエリート投資家は何を見て動くのか』も書店で確認してみましたが、目玉となっている著名投資家のインタビューがかなり要約されていたので、個人的には物足りなく感じて購入は見送ることにします。

印象に残っている言葉


以下に、印象に残った言葉をまとめておきます。

・「消費者」で終わらず、投資することで「オーナー意識」を持つということが経済的に自立するためには欠かせない(p. 24)

・「与えること」が真の豊かさにつながる(p. 96)

・ブローカーは「肉屋」で、受託者(筆者注:独立ファイナンシャルプランナーのような意味)は「栄養士」(p. 153)

・野心的な投資家は、比較的短期間に50万ドルの損失を被ることもあり得る。しかし、実際に損失を経験するまでは、自分の「真のリスク許容度」を知ることはできないものだ(p. 266)

・「楽しみ」のためのお金も準備しておく(p. 274)

・自問すべきは、「次の経済危機が襲来するかどうか」ではなく、「襲来時期はいつか」なのだ(p. 318)

・もし30年前にジョージ・マロニーがエベレスト山頂に到達したのなら、エドモンド・ヒラリー卿が、エベレスト初登頂の栄誉と騎士号まで授けられたのは、なぜか?それは、ヒラリーがエベレスト登頂後、無事に下山したからだ。マロニーは登頂には成功したものの、下山途中で遭難死した(p. 350)

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すいさく

Author:すいさく
40代、2015年8月頃から投資らしい投資を始めた初心者の日々をつづっています。

インデックスファンド・国内外のETFを中心にバイアンドホールドを基本に投資していますが、日本・海外の個別株式も一部保有しています。

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